地元の長老に話を聞くのは有効か?

家系図 ルーツ

第124号 (2015年4月30日) ※読者数6,709人

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1.家系図ニュース~業務の質を保持する為に一時的に依頼受付を休止中です
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こんにちは、行政書士の丸山学です。

前号から読者数が千人以上増えました(現在、6,700人ほどになりました)。初めての読者の方、今後ともよろしくお願いいたします。

一応、初めての方に向けて自己紹介をしておきますと、私は家系図作成を専門にしており、ご依頼人のご先祖様の記録を調べる事と家系図に書き表す事を仕事にしております。
調査の方法は、一律ではないのですが主に下記のようなものです。

 ・古いところまでの戸籍取得
 ・旧土地台帳の取得
 ・郷土史の読み込み
 ・墓石の確認・拓本取り
 ・江戸時代に居住していた村の古文書調査
 ・同姓の方への聞き取り
 ・菩提寺への聞き取り
 ・武士であれば分限帳(藩の名簿)調査

…などです(コースや案件によって内容は異なります)。
但し、ご先祖調査はあくまで本人のご先祖様に限らせていただいております。
他者の家系・先祖を調査する事は出来ません(ご依頼時に本人確認をいたします)。

ただ有難いことですが、現在ご依頼が非常に立て込んでおりまして新規のご依頼を一時的に休止させていただいております。あまり多くご依頼を受けすぎますと、どうしても調査の質が落ちてしまいますのでご理解をいただけますと幸いです(何しろ、戸籍の範囲を超えた調査は私、丸山がすべて一人で行っておりまして…)。

2~3か月もすれば再開できると思います。
再開した際には当メルマガでもお知らせさせていただきます。

また、私が執筆しました書籍がありますので、もしよろしければご一読をいただけますと幸いです。おかげさまで、こちらの書籍も順調に増刷を重ねております。


◆重版(3刷目)『先祖を千年、遡る』(幻冬舎新書)
※目次・購入
⇒ https://www.5senzo.net/book-senzo.html

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◆twitter『ご先祖探し実況生中継ツイッター』
⇒ https://twitter.com/marujimu
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◆家系図作成サービス
調査範囲を戸籍取得だけに限るリーズナブルなコース
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 戸籍2系統+歴史探訪報告書コース
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戸籍を超えて徹底的に文献調査・現地調査も行うコース
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 200年たどるコース
 400年たどるコース
 1000年たどるコース
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2.地元の長老に話を聞くのは有効か?
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さて、自家のルーツをより深くたどろうとする場合、「地元の長老に話を聞く」という手法があります。

ここでいう「地元」というのは、江戸時代~明治時代にかけてご先祖様が居住していた本籍地のことになります。
まずは、自身から遡り明治時代の戸籍まで全て取得するのが基本です。

その明治時代の戸籍に記載されている本籍地こそが江戸時代~明治時代にかけてご先祖様が居住していた土地です(例外もありますが、ほとんどがそうです)。
その土地に詳しく、かつ昔のことをよく知っている長老から話を聞くことは当然に有益といえます。

…但し、既に平成27年の現在においては「長老」といいましても、もはや大正時代生まれの人さえ少なく明治時代以前の話を伺っても「分からない」と云われることも多くなってきました。しかし、それでも思いもよらぬ情報がもたらされる事もあります。

先日、近畿地方の案件でこのような事がありました。ご依頼人家は明治時代まで、ある村に居住していた事は古い戸籍からも確認できていました。(明治後期に他所へ転籍されてその村を離れました)
また、江戸時代から代々、医者をしていたという言い伝えもあり、現在でもその旧村(現在の大字に相当する地域)の公民館にはその診療所の看板が保管されています。

但し、残された墓石を調査してみますと江戸時代後半のものからしか存在しません。
非常に立派な墓石で江戸時代のものでありながら刻まれた文字が今でもはっきりと読むことが出来ます。周囲の旧家の墓石を確認しますと、江戸時代中期から存在しています。

もし、ご依頼人家が江戸時代前期からその村に居住していたとすれば、もっと古くからの墓石があって然るべきです。なのに、ありません。ある時代から忽然と登場します。
そして、ご依頼人家に残されている過去帳にも江戸時代前期からの記録があります。

一体、ご先祖様はどこからその村に移住してきたのか?また、何故に移住してきたのか?という事がどうにも不明でした。

調査の過程で、その旧村の古文書(宗門人別帳・検地帳など村人名が出てくるもの)がどこかに現存していないか探していきました。
その地域で江戸期に庄屋を務めた家が現在もそうした古文書を所蔵している事が多くあるために、まずその村の庄屋家がどちらかを調べていきコンタクトしました。

その庄屋家(正確には何村かを束ねる大庄屋でした)の現当主は90歳代の大正時代生まれの方でした。
実は、古文書の方は散逸してしまい見ることが出来ませんでしたが、その90歳代の長老の方が、ご自身の祖父からさらにその祖父から伝わるという話を聞いていました。分かりづらい表現になってしまいましたが、つまりご自身の4代前の方からの話を聞いており、依頼人家のご先祖様(医者)の話もよく聞いているとの事でした。

それによりますと、江戸時代の後半、その村には医者がなく村民のためにその大庄屋だった家のご先祖様が藩に対して何とか医者を招聘してほしいと請願していたそうです。
そうしましたところ、その藩ではなく隣の藩(小藩がひしめく土地です)の藩領内に兄弟で医者をやっている者がいるので、その弟の方をその村に移住させる事に藩のほうで話をつけてくれたそうです。

そうして、江戸時代のある時期に突然にその医者(ご依頼人のご先祖様)がその村に来住し、明治時代後期まで現公民館で診療を続けてくれたそうです。そして、(明治期になってからの話と思われますが)その医者は漢方医でしたが西洋医学も取り入れて画期的な診療を行ったそうで、評判がよく山を越えた隣村からも診療に訪れる人が多かったそうです(その為、のちには山を越えた隣村にも出張所
が出来たそうです)。

こうして、ご依頼人家がその土地に来住した経緯は明確になりました。もっとも、村で評判の医者であったという特別な事情がありましたので4世代の後まで言い伝えが残ったともいえます。なかなか、そうした事情でもないと明確な言い伝えは残りません。これは、かなり運が良かったケースです。

ですので、明治どころか大正生まれの人さえ少なくなった昨今では一昔前のようには有効な情報を得られることも少ないですが、試してみると何か面白い事実に行きあたるかもしれません(こういう事は当然ですが、出来るだけ長老がご健在のうちに早くやらなければなりません。「あと5年早く来てくれれば詳しい方が生きていたのに」という台詞を何度聞いたか分かりません…)。